HISTORY


身体の動きと感情をひとつにする

そんな素敵なお仕事です。



♪バレエピアニストという特殊なお仕事をするようになったきっかけ


―もともとお芝居やミュージカルが好きで、将来は舞台に携わる仕事がしたいと漠然と考えていました。ピアノのコンクールなども受けていましたが、高校の修学旅行のときミュージカル「エリザベート」を観て、舞台芸術の素晴らしさに取り憑かれました。

大学ではドイツ語を学び、いつか私もこの舞台に参加したいと、意欲的に視野を広げる活動を始めました。

学生ミュージカルに楽曲提供をしたり、東京芸術劇場でオペラ制作や急遽稽古ピアノも勤め、世界的な演出家コンヴィチュニーのセミナーに参加したり…オペラのコレペティの勉強もしました。

しかし、この業種は門扉が狭く公募されることがほとんどないので、なかなか夢の第一歩を歩むことはできずに悶々とした日々が、、

それでも諦めず、諦めず、行動、行動、行動...

そんなときにある芸術祭で出会った方から「バレエのお仕事をやってみないか」とお仕事の依頼をいただいたのです!

ミュージカル、オペラでもなくバレエ?!

まさかの展開でした。



♪バレエピアノとの出会い


ーバレエピアニストとして職業をされている方の経歴は、バレエ経験者、未経験者の二通りあると思います。

私は後者の未経験者でありましたので、バレエの作品自体よく知らず、唯一自宅にあったレーザーディスクで「白鳥の湖」を見ただけでした。

初めて担当させていただいたクラスが大人のためのフロアストレッチのクラス。

ヨガのような柔軟をメインにしたクラスだったので、バレエの基礎を知らなくても身体の声に耳を傾けながら、イメージを膨らませていきました。

先生の動きと自分の音楽が呼応し、クラス全体の空気が一つになる瞬間に、今まで学んできたクラシックピアノとはまた違う新たな世界を知ることができたのです。楽譜から解き離れ、身体の動きとともに音楽を奏でる…その創作課程はとても興味深いものでした。



♪バレエの型を覚える


―バレエをご経験されている方にとって常識であるクラスレッスン、いわゆるピアノでいうハノンや練習曲を行うウォーミングアップを指すのですが、それを理解するのがとにかく大変でした…。 新しい言語を習得する感覚で、単語や文法を理解し、使えるようなレベルに引き上げるのを独学で学んでいくのはとてもハードなことでした。「グランバットマン、、何だその怪獣は?!」

自分で実際に動いてみたり、作品を見てそのパの性質を学び、立体的なピアノ表現や即興、アレンジ法を毎日全ての時間を費やして学んでいきました。 

バレエピアニストを始めた頃は「この曲にこの動き?!」と思われたことは多々あったと思いますが、私が学んでいく課程を応援してくださる方も多く、バレエと音楽という異なる表現法ではあるけれども、両分野が共有できる領域を探していきたいと思うようになりました。



♪バレエピアノから学んだこと


―まず、身体を知るということです。

バレエでは小さい頃から身体の仕組みを学ぶのですが、音楽では指先を動かすことから始まってしまうので、あまり身体全体の骨の構造や関節が、どのように動きと連動しているか知らないまま過ぎてしまうことが多いのです。

そして楽譜に書かれた音楽を立体的に感じることや呼吸の大切さ。

これは普通のソロ演奏や楽器や歌とのアンサンブルでも大いに役立ちます。



♪バレエピアニストとして大変なこと、やりがい


―芸術には終わりがなく、常に鍛錬を続けていくものですが、バレエピアノのクラスは毎日行われ、日々本番となるので、気が抜けません。学生時代はコンクールや試験のときに頂点がくるようにすれば良かったですが、仕事となるとそれが毎日になるので、常にコンディションを整えなければなりません。1クラスに20曲以上の曲を毎日演奏するので、飽きがこないように様々なところにアンテナを張って曲を考えていくことが必要。演奏は良くも悪くも自分そのものが出てしまうので、ごまかしがききません。ものすごくエネルギーのいる職業だと思います。

大変な面が多い一方、クラスが一体となれたときの幸せはとても大きいです。

まずダンサーさんの目が生き生きとし、私が出した音を身体と心で表現してくれるのです。一言も言葉を交わさずに気持ちが同じ方向に向くって素晴らしいことですよね。音が物語となり、バレエという身体表現で演じてくれる…またその瞬間を味わいたい!

その繰り返しのような気がします。